高気密高断熱について
近年、省エネ住宅という言葉を耳にすることが多いと思います。
国も2050年カーボンニュートラルの実現に向けた対策として省エネ住宅の普及に力を入れています。しかし実際どんな住宅なのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
省エネ住宅とは、冷暖房による消費エネルギーを抑えることができる住宅。
そのまんまですね。
どういうことかというと、夏は室外からの熱が室内に侵入しない、冬は室内の暖かい空気が逃げない、ということになります。そこでポイントになるのが、①熱を逃さない「断熱」、②熱を入れない「日射遮蔽」、③一定の温度に維持しやすい「気密」となります。
では具体的にどの様な対策をしていくかですが、省エネ住宅の目安になるのが「省エネルギー基準」です。最新の省エネ基準では「外皮性能」、「一次エネルギー量」という基準が設けられています。
・断熱(外皮性能)
外皮の性能基準には、断熱性能を示す「外皮平均熱貫流率(UA(ユーエー)値)」と日射遮蔽を示す「冷房期の平均日射熱取得率(ηAC(イータエーシー)値)」があります。
一次エネルギー消費量基準では、設計仕様で算定した値「設計一次エネルギー消費量」が、基準仕様で算定した値「基準一次エネルギー消費量」以下となることが求められます。
長野市は「4地域」に区分されていますので、「基準UA値=0.75」、「基準ηAC値なし」となっています。つまり最低限UA値=0.75の家を建てましょうということです。
しかし長野市は、夏は35℃を超え、冬は−10℃まで下がることがあります。年間や1日の温度差がかなり大きな地域なので、この基準を満たすだけでは快適な家とは言えません。
国が定めるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準のUA値=0.6(4地域における)を下回る、UA値=0.5を下回って初めて高断熱と言えると思います。
(一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会 通称HEAT20 で詳しくグレードを定めているので参考にしてください。http://www.heat20.jp)
当社での推奨は最低限HEAT20のG2グレードの水準 UA値=0.34をクリアすることです。長野県でも4地域における推奨基準と定めています。(この基準をクリアすると信州健康ゼロエネ住宅助成金の追加対象となります)
一般的な充填断熱工法ではUA値=0.5を下回ることが出来ません。クリアするためには、付加断熱といって充填断熱に外張り断熱を付け加える必要があります。そのため工事費は上がります。しかし、断熱性能が上がれば光熱費は下がります。また、快適性が格段に上がるので十分やる価値はあると考えています。
・日射遮蔽
日本建築では屋根の「軒」と言われる部分があります。和風の建物を思い出してみてください。屋根が外壁より伸びている部分があると思います。元来、日本建築では軒の出が75〜90cmほど出ています。この軒の出が、太陽高度が高く暑い夏の日射を防ぎ、太陽高度が低い冬の日射は建物内に取り込みます。また、夏は西日が強いので西面の窓にはルーバーを設けたり、窓の上にだけ庇と呼ばれる小さな屋根を設けたりします。
このように自然エネルギーを活用する設計手法を「パッシブデザイン」と呼びます。太陽光の他には、自然風や地熱があげられます。パッシブデザインの対として「アクティブデザイン」という機械設備を用いる手法があります。パッシブとは「受動的」という意味なのに対し、アクティブとは「能動的」という意味です。どちらも省エネ性能を高める手法であり、機械設備も導入しますが、太陽に素直に設計を行うパッシブデザインを高気密高断熱と組み合わせることにより、省エネ性と快適性を確保することが出来ます。
・気密
どんなに断熱性能を高めても隙間だらけでは意味がありません。
断熱性能が高い魔法瓶の電気ポットをイメージするとわかりやすいと思います。中のお湯がいかに熱くても蓋を開けたままだとすぐ冷めてしまいます。熱さを維持するためにエネルギーを使い続けます。また中の熱を逃すだけでなく、外から熱も入り込みます。これでは省エネ性能が高いとは到底言えません。
気密性を表す数値として「隙間相当面積 C(シー)値」という値があります。
C値は、建物の床面積1㎡あたりの隙間面積を表す値で、小さいほど気密性が高くなります。例えば、床面積100㎡の家で、C値が1.0の場合、建物全体の隙間を集めると100㎠(正方形10×10cm相当 ハガキ0.67枚分)あるということになります。
以前の省エネ基準ではC値=5が基準とされていましたが、現在はC値が1を下回って初めて高気密と言えると認識されています。
このように、3つの要素が組み合わさることで快適に過ごせる省エネ住宅が完成します。
また、WHO(世界保健機関)では寒さによる健康影響を懸念しています。こちらについてはまた記載したいと思います。